『未来のイヴ』に先駆ける自動人形小説、という紹介文からずっと気になっていたものの、ようやく購入。ウィティントン少佐の館の描写からわたしが想起したのは、『イノセンス』のキムの屋敷だった。茶運び人形が特に。
ド・サルキュス氏は会釈した。奇妙な音が聞こえた。ウィティントン卿夫人は頭を振り、口を開けて片言をしゃべった。
「卿、美しい、卿、優しい、わたし、卿、愛します」
こう言うと夫人はまた頭を振り、会釈してお茶のテーブルの方へ滑るように進んでいった。
「私の娘です」少佐は続け、金髪のばら色の娘の頰を手で愛撫した。
今度は娘が頭を振り、口を半分しか開けずに非常にはっきりと発音した。
「パパ、パパ」
そして母親のもとへ戻った。
少佐は今度はそれほど格式ばらずに、順に、ウィティントン嬢の婚約者である海軍青年士官アンリ・スミス、褐色の毛髪で青白い顔の家庭教師アンナ嬢、つき添いの婦人でさっき刺繡をしていたイングラム夫人を紹介した。この三人もウィティントン夫人と令嬢に倣って挨拶をし、再び席についたスミス氏を除いて、ウィティントン卿夫人のいるテーブルの方へと赴いた。そこでは夫人がすでに湯気の立つティーポットの中味をとても器用に小さな陶器の茶碗に注いでいた。
シャルル・バルバラ「ウィティントン少佐」『蝶を飼う男:シャルル・バルバラ幻想作品集』亀山乃里訳、国書刊行会、2019。

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