「あなたたちのおかげで、良い解答を得られたわ」
 幸子の言葉に誰もが顔を見合わせた。目のまわりに隈を作ってまで読書三昧していた彼女のことを思うと、気味が悪かった。
「で、作家は、どういう女が好きか解ったって言うの?」
 りえ子がおそるおそる尋ねた。
「もちろんよ、なかなか大変な女性がお好みみたいよ」
「へえ……」
 幸子は得意そうに話を続けた。
「もと逆説的形容詞の頭につく娼婦で料理上手で夫をたて、決して能動的にセックスを求めず、あらがいながらもそれに応じて言葉にならない言葉を発し浮気をされてもへっちゃらで、病人の看病が上手く葬式慣れしていて忘れっぽく教育されることを好み隣りにげろを吐かれても人生の深淵をのぞいたと理解をしめす女よ」

山田詠美「逆説がお好み」『快楽の動詞』文春文庫、1997年 

 

 

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