• どれほどささやかで拙いものであっても何かを表現する手段があることが、茫漠とした世界を手探りで不器用に彷徨うしかないなかで、唯一の確かな希望であると感じる。わたしが発したものがもしもあなたのところまで届くのならばそれほどの喜びはないし、わたしもまたあなたの世に放ったものを、わたしなりに追い続けていたい。

  • パリの左岸、ポン・ヌフから小道に入ってすぐに位置するギャラリーGalerie Da-Endへ。外観からして異空間への入り口という佇まいなのですが、扉を開けた瞬間に、しばらく忘れてしまっていた類のときめきと、ノスタルジーのような感覚とでたちまち胸がいっぱいになりました。

    訪れた展示は2010年のオープン以来、年に一度開催している« Cabinet des Merveilles »のシリーズで、今回のテーマは今年の干支にも纏わる「月と兎(the Moon & the Rabbit)」。

    アジアに広く根付いた月と兎をめぐる伝説や神話のエッセンスに、わたしたち(?)のバイブル『不思議の国のアリス』のモティーフも織り交ぜられ、長らくご無沙汰していた甘美でダークな幻想世界(久しぶりに使ったわこういう表現)に浸り込みました。オーナーの方がこのギャラリーのコンセプトといくつかの作品について解説をしてくださったのですが、その言葉のひとことひとことが、外界から隔てられた薄闇の空間に美しく響いていた。

    設立時のオーナーが日本人のアーティストであったという経緯もあり、ギャラリーではこれまで日本人作家のほかに、日本の伝統工芸やポップカルチャーにインスピレーションを受けた作家の作品を数多く展示してきたとのこと。わたしがこのギャラリーを知るきっかけになった、大好きなスズキエイミさんの作品を観ることも叶ったし、多くの心惹かれる作家さんを知ることができて嬉しかった。

    パリでこういったギャラリーに出逢えるなんて思っていなかった、いえどこかには必ずあるのだろうなと思ってはいたものの、ちゃんと探そうとしたことがこれまでなかった。この空間の存在に気付くことなく一年半以上のあいだこの街に住んでいたのだなと思うと、自分の怠慢と感度の低さとに反省しかない。

    « Cabinet Da-End XII – The Moon and the Rabbit »

    du 28/01/2023 au 11/03/2023

    Galerie Da-End

    17 rue Guénégaud, 75006 Paris

    http://www.da-end.com/

    Instagram : @galeriedaend

    *

    オーナーであった七種諭さんは2021年に世を去られた。わたしは寡聞にして存じ上げませんでしたが、とても有名なフォトグラファーの方であったのですね。

    « Mais la lune, ne nous rappelle-t-elle pas sans cesse le soleil, son alter égo masculin? Si le cabinet de curiosité est la représentation d’un univers personnel et intime, il reflète ici l’âme de la galeriste, où le microcosme est à l’image du macrocosme: même au coeur de la nuit la plus noire, le soleil, comme le regretté Satoshi Saïkusa, n’est jamais absent: sa lumière, réfléchie par la lune, contient l’éternelle promesse du retour du soleil à l’aube … »

    *

    一緒に行ってくれてありがとう🐇🌕♥️@praesentiae

  • 昨年公開されたエミリー・ブロンテの伝記映画『Emily』、フランスに上陸したので先行上映会へ行ってきた。

    *

    結論、この映画のエミリーは、わたしのエミリーではなかった。(ごめんなさい)

    個人的にはまったく受け容れ難く絶句してしまったBBCの伝記ドラマTo Walk Invisible(2016)に比べると、本作での監督のやりたいことは、わからなくもない。

    今の時代に彼女の伝記作品を作るならば、これはこれで、まあナシではないのかしら、とは思えなくもない。

    でも、彼女には『嵐が丘』は書けないだろう。

    (完)

    補足: わたしのエミリーではなかったけれど、彼女を演じたエマ・マッキーの眼差しは凛々しくて力強く、魅力的な人物像ではあると思ったし、そして何より西ヨークシャーの荒野は本当に、文句なしに美しい。観る方はぜひ映画館で…

  • トロカデロのシテ建築遺産博物館にて、Art Décoのスタイルをめぐるアメリカ/フランスの相互関係をテーマにした企画展。

    ポスターの雰囲気からLes années folles ~ キラキラ🥂💃💎って感じかなと思っていたら(まあそうではあるのですが)、当時の両国の政治・社会的背景が時系列でよく説明されていて、建築、絵画、彫刻、室内装飾、ファッション、ポスター、雑誌、家電などなど幅広いジャンルの展示品たちが溢れ返りそうになりながらも秩序立って構成されており、骨太で学ぶところが多かった。

    世界中に伝播し華開いていったアール・デコが1929年の大恐慌によって衰退していくなかで、アメリカで職を失った建築家たちがフランスに帰国し、彼らが中心となってシャイヨ宮(この展覧会の会場!)のプロジェクトを実現させていったのだ──とストーリーが締め括られていったのには、心のなかで拍手でした。

    わたしのiPhoneのカメラロールに残っていた写真はきらきら系ばかりであった。

    « Art déco France / Amérique du Nord » – Cité de l’Architecture et du Patrimoine, du octobre 2022 au 6 mars 2023

    https://www.citedelarchitecture.fr/fr/agenda/exposition/art-deco-france-amerique-du-nord

  • はじめてのEmmaüs

    はじめてのEmmaüs

    眼鏡をかけてちょこんとお店番していたこの子が妙にかわいくて

    お迎えしたのは別の子だけれど なんとなく名残惜しくて写真に収めました