• 年の瀬にモンマルトル美術館にて、フェルナンド・オリヴィエをめぐる初の展覧会“Fernande Olivier et Pablo Picasso, dans l’intimité du Bateau-Lavoir”。

    ピカソのパリでの最初の恋人であり同時代の画家たちのモデルとして知られている彼女を主題とし、モンマルトルの洗濯船(Bateau-Lavoir)でのピカソとの生活、その周囲の画家たちとの交流を中心に、彼女の生きた一時代が再現されている。

    家族からの虐待、最初の夫からの暴力をはじめとして、彼女の人生は幼少期から幾多もの苦難の連続だった。夫から逃げ出しモデルの職を得、23歳で同い年のピカソと出逢ったのち、二人は貧しい暮らしのなかで強く惹かれ愛し合いながらも、互いへの嫉妬や独占欲などを原因として常に諍いが絶えなかったという。

    彼女の著作であるPicasso et ses amisと死後に刊行された彼女の日記Souvenirs intimesには、それらの様子が赤裸々に綴られており、展示会場のくすんだピンク色の壁には、著作からの抜粋、理知的で力強く、ときに烈しい情念に満ちた言葉の数々が、彼女自身の筆跡の写しを織り交ぜながら鏤められている。

    いつかきちんとまとめておきたいけれど、コンセプトから作品、展示方法までさまざまな面でとても素敵な企画展でした。2022年わたしに刺さった展覧会ベスト5に入るはず。

    フランスに来てから、マルモッタン・モネ美術館でのJulie Manetや、ピカソ美術館でのMaya Ruiz-Picassoの展覧会をはじめとして、偉大な芸術家の、恋人や家族といった周辺として取り上げられるにすぎなかった女性たちに光を当てる趣旨の展覧会を見る機会が多くて、本当に嬉しい。

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    モンマルトル美術館はパリの大好きな美術館(無限にあるが)のひとつ。企画展の会場になっている建物には、モーリス・ユトリロの母親としても知られるシュザンヌ・ヴァラドンのアトリエの復元がある。

  • 年内の諸々がひと段落したので少し久しぶりに美術館を解禁、して早々にテンションぶち上がる展示に出逢えました。

    まずはMusée des arts décoratifsで、デザイナーElsa Schiaparelliの展示« Shocking ! Les mondes surréalistes d’Elsa Schiaparelli »。

    会場入り口のショッキングピンクを背景にした太陽が目に入った瞬間からもう気が高まらざるを得ないのですが、各年のコレクションも蝶々やお目々や黄道十二宮みたいなときめき必至のモティーフで埋め尽くされている。

    彼女はイタリアのローマの出身、ロンドン、ニューヨークからパリへと渡ってデザイナーとして才能を開花させ、シュルレアリストを中心にダリやマン・レイ、コクトーといった芸術家たちともコラボレーションした。彼女の自伝Shocking Life (1954)はもうタイトルがすでに素晴らしいのだけど、少しぱらぱらとみてみたらやはりとっても面白そう。

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    それから同時開催中の、80年代のフランスとモードとデザインとグラフィック・アートについての企画展« Années 80. Mode, design et graphisme en France »も学ぶところが多かった。

    80年代というのは絶妙な切り取り方だと思う。mai 68みたいな画期的な何かがあるという印象がなかったし、歴史として勉強しようとするにはおそらく新しすぎるから…と思ってしかいなかったけれども(とはいえもう40年前なのだが)、ミッテランの大統領就任による左派政権発足を嚆矢に、現在のフランス、特にパリの都市文化を把握するうえで見逃せない出来事が色々とあったのだとあらためて理解した。

    愉しい展覧会を見ると本当に元気が出るのです

  • ジェンダー史のゼミのおでかけで、ポンピドゥセンターで開催中のAlice Neel展へ。

    20世紀を通じて主にニューヨークをベースに米国で活動、コミュニストとして生涯をかけて社会運動に身を投じ、都市の周縁化された人々を中心に数多くのポートレートを残した。

    肖像画もとても面白かったし、個人的には恐慌時代のニューヨークを描いた作品とバスルームのヌードの男女(彼女自身)の水彩画が気に入った。

    ただ、展覧会の解説では、インターセクショナルな観点から差別や不平等といった社会不正義と闘い、フェミニズムのイコンとなった… といったテクストにあらわれているように、現代の文脈から読むという企画者の意図があまりに前面に出過ぎているように感じられて、もちろんそれ自体はものすごく大事なことながら、作品たちがすべて彼女のengagementに還元されてしまっているような印象を受けた。

    少し調べた限りでは彼女についての日本語の情報はほとんど見つからなかったけど、2021年にはMETで回顧展があったようだし、ぜひ紹介されてほしいな

    “Well, in politics and in life, I always liked the losers, the underdog.

    There was a smell of success that I don’t like.” Alice Neel, 1984

    1. « Synthesis of New York » (1933)

    2. « The Intellectual » (1929)

    3. « Spanish Party » (1939)

  • Edvard Munchはたぶん本当に大好きな画家のひとりで、2018年の東京都美術館での展覧会はこれまで自分が行った展示のなかでも特別に印象に残っているのだけど、この9月からオルセー美術館でなんともタイミングよく企画展が始まった。

    正直なところ構成や解説に関しては、都美での展覧会の方が個人的な嗜好にずぶずぶと刺さったのだけれども(家族の死や友人関係、性愛をめぐる苦悩や恋人との諍いをはじめ、私生活の伝記的要素が比較的詳しく解説され、狂気とすれすれの精神を深く掘り下げてくれている感じがしたので)、オルセーの今回の展示はムンクの画家としての活動、制作スタイルや技法の特徴を幅広く紹介するという至極真っ当(?)な趣旨で、初めて知ったエピソードもあり、絵画からデッサン、版画と点数も多くとても充実していた。二つの展覧会の性格の違いは、「共鳴する魂の叫び」と、« Un poème de vie, d’amour et de mort » というサブタイトルにもあらわれている…のかも。

    一枚目の写真は、ひと目見るなり惹きつけられてしまった女の子。

    “The Green Room”というシリーズを構成する作品のひとつで、タイトルは« The Murderess »。

    ああそっか、殺しちゃったんだね、って、気がついたら心の中で彼女に声をかけていました。

    数年の間にふたつの都市で、好きな画家の大規模な回顧展を訪れる機会を得たのは幸運だったかもしれない。どちらもかなり混雑しており鑑賞するのに適した環境とは言い難かったものの、それでも面と向かい合うと周囲の人の気配がすべて無化されるかのように深く没入させられてしまう力が作品にはあり、存分に魂を共鳴させたのちに、明日からまた生きていかなければなという気力をもらえたのでした。

    自分の趣味や関心の範疇では、これまで北欧にはほとんど縁がなかった。

    でもいつか、オスロのムンク美術館に行ってみたいし、彼が描いていた夏の白い夜も体感できたらいいな。

    La Meutrière, 1907, Oslo, Munchmuseet

  • Musée Carnavaletにて、フランスの女性解放運動の歴史をテーマにした展覧会 « Parisiennes citoyennes ! Engagements pour l’émancipation des femmes (1789-2000)»。

    1789年の革命から2000年のパリテ法の実現まで、フランスのフェミニズムの歴史を時系列に概観することができて勉強になります。

    Olympe de Gougesをはじめ女性の社会的地位の向上に重要な貢献を果たした女性の著作、「ブルーストッキング(bas-bleu)」や「新しい女(femme nouvelle)」のカリカチュア、運動を呼びかけるポスター、デモや集会の写真にドキュメンタリー映像、著名な女性作家やアーティストの作品など、とにかくイメージが充実しており、力強くてポジティヴなエネルギーに溢れた展示でした。

    大きなお人形さんもいました。